2010年08月04日

日常美術館(その1)

日常美術館

落ちてゆく太陽が
いよいよ激しく燃え上がるのを

すみれ色の空
 
一番星の瞬きは
残り火の上で強くなり

ありきたりな夜をむかえるまでの
ほんの数十分

見逃すものか
posted by 柳屋文芸堂 at 23:48| 【詩】日常美術館 | 更新情報をチェックする

日常美術館(その2)

   香水広場

 変に香りの良い霧雨が降っている。
 耳を澄ますと、鳥が、

 プレパラピレン
 ピレパラプリン
 ピリピリピリ……

 確かに化学的な雨だ。

「おはようございます!」

 突然の大声に驚いて振り向くと、
 女が携帯電話で話していた。

 時計は午後二時を指している。

 先生の所に急がなければ。
posted by 柳屋文芸堂 at 23:47| 【詩】日常美術館 | 更新情報をチェックする

日常美術館(その3)

アオスギル

ひどい風で
雲は全部吹き飛ばされたあとだった

不吉なほどの青空
誰かキズをつけてよ
切れ味の悪い彫刻刀で

このままじゃ
不安になる

人と同じだね
うん、人と同じだ

風呂場で失敗して
びしょ濡れになるまで
目が覚めなかった
posted by 柳屋文芸堂 at 23:45| 【詩】日常美術館 | 更新情報をチェックする

日常美術館(その4)

   注意すること

 歯磨き粉と
 洗顔フォームを
 間違えないこと
(近くにあるので)

 入浴剤と
 洗濯用洗剤を
 間違えないこと
(近くにあるので)

 自分の魂と
 他人の魂を
 間違えないこと
(近くにあるので)

 よく見て
 しっかりと確認すること
posted by 柳屋文芸堂 at 23:44| 【詩】日常美術館 | 更新情報をチェックする

日常美術館(その5)

初夏の家

鳥に詳しい訳ではないけれど
ツバメだけはすぐ分かる
飛び方に特徴があるから

ツイッと線を引くような
渡り鳥のスピード

どこにだって行けるだろうに
わざわざ人目に付くところに巣を作る
変な鳥だ

見せびらかしたいんですか?
家庭を築く喜びを
その美しさを
自由を

……妬まれると危ないぞ?
posted by 柳屋文芸堂 at 23:43| 【詩】日常美術館 | 更新情報をチェックする

日常美術館(その6)

一日

全然働けなかった一日
死んでいたような一日

目一杯働かされた一日
死んでいたような一日
posted by 柳屋文芸堂 at 23:36| 【詩】日常美術館 | 更新情報をチェックする

日常美術館(その7)

   駅員

 東京の地下には
 駅員という生き物が棲んでいる

 土中生物は目が退化するというけれど
 駅員は
 死んだ目を光らせて
 地下茎の確認をする

 休憩時間の
 馬鹿話 猥談
 そのさなかにも
 時報にピクンと耳を震わせ
 腕時計の時刻を合わせる

 安全確認
 滞りない運行

 妻子の待つ家に着き
「パパでちゅよー」
 と叫ぶまで

 駅員にかけられた魔法は
 決してとけない
posted by 柳屋文芸堂 at 23:34| 【詩】日常美術館 | 更新情報をチェックする

日常美術館(その8)

お母さんになれなかった私

お母さんになれなかった私
遺伝子を残すことに
深い意味はないと分かっていながら
生物としての私が
寂しがっているのを
私は知っている

お母さんになれなかった私
お母さんになった友達の相談に乗って
「ありがとう」
と言われて
爪の先2ミリくらい
お母さんになれたような
自己満足

いないないばぁ!
会いに、行くね
posted by 柳屋文芸堂 at 23:32| 【詩】日常美術館 | 更新情報をチェックする

日常美術館(その9)

   首輪

 自分の人生が台無しになるのを
 見ていられない
 このまま檻の中で
 朽ちていくのか

 きみが望んで
 きみがすすんで
 入っていったんだよ?

 そうかな。
 本当にそうなのかな。

 小さな窓に切られた
 小さな青空を見上げ

 いつか必ずここから
 脱走してみせる

 そう決意して
 今日も私は
 檻の中をピカピカに磨き上げる
posted by 柳屋文芸堂 at 23:29| 【詩】日常美術館 | 更新情報をチェックする