「また福島に行きたいね」
という話になり、今回は五色沼を目的地に決定。
前からちょっと憧れていたので。
五色沼は、磐梯山の噴火で出来た湖沼群。
いくつもある沼の総称で、「五色沼」という沼がある訳ではない。
名前の通り、それぞれ色んな色をしているようだ。
このあたりの地域を「裏磐梯」という。
磐梯山の裏だから裏磐梯なのかな?
裏磐梯の情報はネットで調べた。
あれこれ読んで感じたのは、
「吾妻小富士より観光地っぽい」
ということ。
バスの運行回数が多く便利な反面、客が多くてのんびり出来ないのでは、と少々心配する。
「都会の喧騒を離れたい!」
というのが山へ行く大きな理由の一つなのだから。
混雑を避けるため、連休に入る前の平日(9月18日(金))に行くことにする。
新幹線の切符は前日の夜にDちゃんがJRのサイト「えきねっと」で予約してくれた。
直前だったのに、まだ二割引の席がある!
そこに決定。
その後、観光ガイドマップや現地のバスの時刻表を印刷。
プリンタのドライバを入れるところから始めたので大変だった。
(パソコンのOSを入れ直したばかりなので、そんなことに。ううう)
PHSと写真機のバッテリーもしっかり充電。
何だかんだやっているうちに午前二時。
もっと早めに準備すれば良かった……
旅行当日、6:30に起きて食器洗い。
寝不足だけど、台所を汚したまま出かけるのはイヤだったので、ホッとする。
最寄り駅の券売機で新幹線の切符を購入。
(クレジットカードが使えるのね! 知らなかった)
普通電車で大宮駅に出て、「なすの」という新幹線に乗った。
発車は9:02
新幹線は飛び立つ直前の飛行機みたいな、キーンという音を立てて進む。
ふわん、と離陸しないのが不思議な感じ。ずっと助走。
窓際の席じゃないから、外があまり見えなくて寂しい。
新幹線の中では私もDちゃんもマスク着用。
インフルエンザが怖いので。
宇都宮駅まではほぼ満席! 平日なのに。
でも、その後は空いた。
10:13に郡山駅到着。
私はここで「女将漬弁当」を買うのを楽しみにしていた。
小泉武夫が美味しそ〜うに本の中で紹介していたので。
売店(福豆屋)を見つけ、嬉々として駈け寄ったのに!
売り切れ〜
がっかり。
ちょうど朝用の分が無くなって、昼の分が入荷する前、という中途半端な時刻だった様子。
仕方がないので小原庄助弁当を購入。
JR磐越西線(ばんえつさいせん)のホームに行き、赤べこまみれの快速あいづライナーに乗る。
↑ホームに行く途中の天井
自由席なのに、テーブル付きの座席。
駅弁を食べるのに便利で良かった。
小原庄助弁当は内容というよりネーミングで買った。
朝寝朝酒朝湯が大好き♪な小原庄助さんを他人と思えないので。
ダメ男でありながら、明るく享楽的なところがステキよね。
さてこのお弁当。
おかずにそれぞれさりげなく工夫があって、美味しかった。
青のりでアクセントを付けたエビ天とか、ピリッとわさびがきいた昆布とか。
あと、豆みそがうちの炒め納豆の味だった!
カリカリして、かなり好みだったな♪
郡山駅ではぜひ福豆屋の駅弁を!
新幹線の上り線ホーム等にあります。
↑車内から撮影した風景
11:19に猪苗代駅到着。
ここで、Suicaでは改札を出られないことが判明。
新幹線の区間(大宮−郡山)しか切符を買っていなかったので、郡山駅では一度改札を出て、Suicaで入り直したのだ。
現金で清算。
切符で入れば良かったな。
駅前で「磐梯東都バス 喜多方駅行き」の乗り場を探す。
おお、それらしいバス停が。
時計を見ると「11:25」
時刻表を見ると「11:25」
……ってことは。
うわ、この目の前のバス、すぐ出ちゃうのね!
慌てて乗り込む。
これは観光専用ではない、普通の路線バス。
途中から乗ってくる地元の人の、のどかななまりの入った会話が聞こえるのも楽しい。
バスの中で、麦わら帽子にお弁当に付いていたひもを結ぶ。
これで風が吹いても飛ばなくなった。
バスはぐるぐると山道を登ってゆく。
30分ほどで「五色沼入り口」に到着。
整理券で後払い。750円。
バス停そばにある裏磐梯ビジターセンターで「トレッキングコースマップ」を購入。50円。
ここにはトイレもある。
五色沼湖沼群を巡る「自然探勝路」を進む。
森の入り口で、道を横切るへびを見た!
が。
写真機を出すのがトロくて撮れなかった……
好きなのに、へび。
今回、森の植物を見るには微妙な時期。
葉っぱは少々疲れ気味で、さりとて紅葉もしていない。
その代わり、やたらにキノコが生えていた!
大量のキノコ写真を撮る撮る撮る……

↑クリックすると見やすくなります。
↑これはよく見ると、歯形が付いている。小動物が食べたのかな。
道は、生き物の気配でざわざわしている。
セミの声。
鳥の声。
カエルの声。
風の音。
時折すれ違う人の足音。
前に登った吾妻小富士と、全く雰囲気が違う。
あそこははげ山で、植物がほとんど生えていない。
当然動物も少ない(トンボくらい)
石ころを踏みながら、ただ、ただ、歩く。
その近くにある鎌沼へ向かう道も、静寂に満ちている。
人ともほとんど会わない。
現世から離れる感覚があり、妙に宗教がかった気分になるのだ。
(私は吾妻小富士の上り坂で「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」のマーサー教を思い出した)
Dちゃんはその、喧騒と正反対の空気を気に入っていたらしい。
私にとっては、この五色沼の道の方が「山歩き」のイメージにぴったり合っている。
重なり合う気配にキョロキョロするのが、楽しい。
(吾妻小富士&鎌沼の精神性の高さも魅力的だったけど)
可愛い小さな花もいっぱい咲いていた。

↑売店横の花壇の花も混ざってる……
クリックすると見やすくなります。

↑キノコ・花以外の植物あれこれ。
クリックすると見やすくなります。
沼の色は、青を中心としたいくつかのバリエーション、という感じ。
薄青、青緑、黄緑、濃紺など。
デジカメが苦手な色とも言える。
紫の要素が抜けて、鮮やかさが失われてしまうのだ。
単に私の腕が悪いだけかもしれないが。
実物の方がずっと綺麗(悔しいことに)
↑毘沙門沼の営業部長。コイを引き連れ(?)観光客にサービスサービス。
↑一度口を開けてエサをもらえなかったら、スパッとあきらめる、潔いコイ。
↑毘沙門沼。色が付いているのが分かるだろうか。
この沼は五色沼の中で最も大きく、一番観光地化されている。
↑毘沙門沼のはじっこ
「この色は『脳フィルム』に焼き付けるしかないね」
シバッ!シバッ!っと目をしばたたかせて「まぶたシャッター」を切っていたら、
「虫がおびえるから、威嚇するのはやめて……」
とDちゃんに止められた。
物凄い形相になっていたらしい。
「植物も足を生やして逃げ出すよ」
とのこと。
↑赤沼……かな
↑みどろ沼。たぶん。
「まさかバスクリンを入れている訳じゃないよね?」
「バスクリンは温泉に似せるために色を付けるんでしょ。ここだって温泉みたいな成分が入ってるんだから……」
「そっか、こっちが元ネタか!」
そう、五色沼は「冷たい温泉」みたいな印象だ。
ほのかに硫黄のにおいがする場所もある。
他に感じたのは、苦いような土のにおい。
ふわっとやって来て去っていった、花の蜜の甘いにおい。
などなど。

↑弁天沼

↑弁天沼
小さな滝もいくつか見た。
目をつぶって、水の音を聞く。
気持ち良い。


突然、キャーキャーワーワーと森の奥がかしましくなった。
まさか熊でも出たか?
身構えていると、なーんだ。
前から小学生の遠足の列が来た。
最初のうちはお互い干渉せずすれ違っていたのだが、途中の何人かが、
「こんにちは!」
と挨拶してきた。するとその後の集団も、
「こんにちは!」
「こんにちは!」
「こんにちは!」
ひぃ、このまま列の最後まで挨拶し続けなければいけないのか。
校長先生じゃないんだから……
途中列が途切れ、干渉しない関係に戻った。ホッ。
木の根や石で足元の悪い所も多少あるが、上り下りは穏やかだ。
バリバリ登山道を歩きたい人には向かないけど、山道をのんびり散歩したい人にはぴったりだと思う。
所要時間は1時間10分と「トレッキングコースマップ」にはある。
しかしそれはおそらく、立ち止まらずにサクサク進んだ場合のことだ。
私たちはのんびり景色を眺め、気になったものを見つけるたびに写真を撮っているうち、三時間以上経ってしまった。

↑小さな生き物たち。クリックすると見やすくなります。
夕暮れが近付くと、日差しが斜めになって、葉や水が素敵に輝く。

写真機を購入して約半年。
今回初めて、首から提げるためのストラップが欲しいと思った。
カバンから写真機を出し、撮影、すぐしまって、また出し……
というのが面倒で。
ずっと手に持ったままだと転んだ時危ないし。
次お店に行った時、見てみよう。

↑一番最後の柳沼
15:30頃、自然探勝路の終点にある物産館に到着。
うーん、結局ヘビは最初の一匹だけで、その後会えなかった……
しょんぼり。
軽食コーナーでどんぐりジェラートを食べる。
濃厚な味わい。
「どんぐりをすりつぶして入れているんですか?」
店員さんに聞くと、
「そうなんでしょうねぇ」
って、自分で売っているのに、曖昧な!
次のバスまで時間があったので、桧原湖(ひばらこ)へ行くことにする。
車道をはさんだ向かい側に、すぐ水面が見える。
「あっ、ボートに乗れるみたいだね」
「アヒル?」
「アヒルもあるね」
「アヒルに乗りたいんですけど〜」
ボート屋のおじさんは、
「そんなこと言わなくても分かってるぜ」
という感じにささっと私たちを誘導してくれた。
ちなみに30分1500円。

ちょうど夕焼けが近く、アヒルの中から写真機を伸ばしてパシャパシャやっていると……
ん?
波だ! 大波だ!!
我らがアヒルちゃんが左右にタプタプ揺れている。
その瞬間、自分の命でもDちゃんの命でもなく、写真機のことだけ心配していた。
後から考えると、アホだ。
どうも、モーターボートが近くに来ると、波が発生するらしい。
次に大波が来た時、Dちゃんはアヒルを波に対して垂直にし、揺れを防いだ。
もうアヒルマスターだ。

↑アヒルから撮影した磐梯山(たぶん)

↑岸からボートの乗り場を撮影
桧原湖とアヒルを満喫した後、物産館に戻ってお土産を買い、バスに乗るため裏磐梯高原駅へ。
これは鉄道の駅ではなく、バス停の名前だ。
ここから猪苗代駅まで870円。
車内でうたた寝してしまった。
疲れたかな。
5:00ちょっと過ぎ、猪苗代駅到着。
夕食を食べようと、事前に目星を付けていたそば屋「ラ・ネージュ」に電話をする。
ところが。
団体客が来るので食事は一時間以上後になる、と言われてしまった。
他の店を見つけなければ、と観光ガイドマップを開くと。
がーん!
今の時刻だと、他のレストランはほとんど閉店ギリギリ。
夜の営業はしていないのか!!
事前の確認が甘かった。
反省。
悩んだ末、とりあえず郡山駅へ行くことにする。
快速あいづライナーの中でDちゃんのPHSを使い飲食店検索サイト「食べログ」にアクセス。
何度か圏外になって苦労しつつも、どうにか評判の良いそば屋「隆仙坊(りゅうせんぼう)」を見つける。
駅前ではないので、Dちゃんは予定が立てにくいと不安がっていた。
新幹線の席も取らなければいけないし。
電話をすると、駅からそう遠くなく、すぐ食事も出来ると判明。
二時間後の新幹線の切符を買い、えいやーっと向かうことにする。
タクシーの運転手さんに店名と所在地を告げたら、迷わずサッと連れていってくれた。
かかった時間は10分ほど。
といっても距離はそれほどでもなく、駅前の混雑を抜けるのに手間がかかっただけ。

「隆仙坊」は古民家を改装し、古民具等を並べているため、独特の雰囲気がある。
私は大好き。
木枠の窓とか、みのとか唐傘とか青いだるまとか。
Dちゃんは鴨汁そば、私は大根おろしそばを注文。
他に「揚げそばがき」というのも頼んでみた。
鴨汁はすごい具沢山。私のはさっぱりしている。
そばは細く、平たくて(通常の半分。因業屋のうどんの千分の一)しこしこしている。
実を言うと私、そんなにそば好きな方ではない。
あのポソポソ感が苦手なのだ。
でも、あのつるんとした食感なら、いくらでも食べられそうだ。
(注:因業屋とは、埼玉県川口市にあるそば屋。ここのうどんはすいとん並みに太い)
「普通あれだけ細ければコシを失うはずなのに、しっかりしていた。(薬味として出された)大根おろしと黒七味がよく合っていて、もっとそばだけで食べたかった」
と我が家の海原雄山も満足した様子。
「揚げそばがき」はおもちをさらにふんわりさせたような食感だ。
アツアツのところを、わさび醤油でいただく。
こんなの食べるの、初めて。
美味しい!
予定は変わったけど、素敵な店に行くことが出来て、良かった。
新幹線の時間まで余裕があったので、徒歩で郡山駅に戻り、改札外にある大きな土産物屋に入った。
「あっ、地ビールがあるよ!」
「みちのく福島路ビール」と「猪苗代地ビール」の、色んな種類のビールがそろっている。
それぞれのメーカーのヴァイツェンを購入。
他に、酸味のある日本酒というのも買ってみた。
駅ビルの本屋をのぞいた後、改札に入る。
一応駅弁屋さん(福豆屋)を確認するが……
閉店していた。
いつか会える日が来るのかな、女将漬弁当。
改札内にもお土産屋があったので「わたなべのくんせい卵」10個入りを購入。
前回の福島旅行でも買って、すごく気に入ったのだ。
帰りの新幹線はピカチュウまみれだった。


くんせい卵を新幹線の中で出す。
一つ食べた後……
もう一つ、どうしよう。
万が一新幹線が脱線でもして、
「くんせい卵が食べたかったのに……!」
と悔やむのはイヤだったので、もう一個食べることにした。
脱線も炎上もせず、新幹線は無事大宮駅に到着。
そのまま普通電車で帰宅した。
福島へは、泊まりで行く人が多いのだろうか。
意外に、日帰りでも楽しめる。
忙しい人におすすめだ。
次はどこに連れて行ってくれるのかな〜?
(おわり)
撮影:GR DIGITAL II