2007年08月17日

ど素人料理談義(その4)

四、ど素人の本棚

 我が家の台所のそばの棚には、料理の本がずらりと並んでいる。それを見た友人は驚いて言った。
「本なんか見なくても、料理なんて適当に作れば良いのよ」
 それが出来れば苦労しないって……
 別の友人に、料理の本を見ながらその日のメニューを決め、買うべき物をリストアップし、そのメモを持ってスーパーに向かうという話をしたら、またもや驚かれた。
「スーパーに行って特売の物を見てからメニューを決めるのが普通でしょう」
 それが出来れば苦労しないってば……
 友人たちは簡単そうに言うけれど、そういうのはある程度の「料理基礎力」があって初めてやれる事だと思う。結婚前、全くと言っても良いくらい料理をしなかった(正確に言うと「させてもらえなかった」なんだが)私にそんな力があるはずもなく、本に頼らざるを得なかったのだ。
 冊数の多さは不安の大きさ。参考書をやたらに買い集める出来の悪い受験生に似ている。一ページも開かないうちに勉強した気になったりしてね。
 料理の本は読み物としても面白いので、一度も開かなかった、という本はない。しかし掲載されているレシピをほとんど活用していない、という本はけっこうあったりする。
 この章では、そんな私の本たちを全部まとめて紹介してみようと思う。
 たとえ再び友人たちにあきれられるとしても……

『決定版 はじめての料理』主婦の友社
 これは本当に便利! ど素人の強〜い味方。この本を見ながら変な事をする場面を何度か書いてしまったけれど、実際はこの本の通りに進めて成功した回数の方がずっと多い。食材別に下ごしらえの仕方と簡単なレシピが載っていて、どれもまんべんなく美味しい。
 これを読むと、料理に慣れた人向けのレシピでは色々な事が省略されているのだと分かる。まあ何もかも書いていたらきりがないからなぁ。

『みんなの定番&きほんの料理』新星出版社
 題名の通り「肉じゃが」「オムライス」「マーボー豆腐」等おなじみ料理のレシピが沢山載っている。作り方の説明も写真入りで分かりやすい。変に凝ったりせず、かといって手抜きもしないので、正統な味の料理が出来上がる。
 ダーリンと私のお気に入りは厚めの豚肉で作るしょうが焼き。香りの良い、とろりとしたタレに包まれたやわらかい肉…… あ〜 食べたくなってきた!

『からだに効くスープ161』家の光協会
 いきなり鶏ガラスープを取った事でも分かるように、私はスープが大好きだ。ほぼ毎日何かしら汁っぽい食べ物を一品作ってしまう。結婚前から持っていた『決定版 はじめての料理』『みんなの定番&きほんの料理』にはスープのレシピが少ししか載ってないので、結婚後この本を慌てて買い足した。写真もないし、説明もそれほど丁寧ではないのだけれど、和風・洋風・エスニックと様々な種類のスープが作れるのが嬉しい。
 最近作ったものでは、レンズ豆を使ったムングダールというインドのスープが美味しかった。

『365日スパゲティが食べたい』文化出版局
 美味しいスパゲティが食べたいね、とダーリンと一緒に選んだ本。フィットチーネやペンネはなく、和風・オリーブオイル・スープ・トマト・ミート・クリームとソース別に、ひたすらスパゲティのレシピが並ぶ。私が作ってもお店っぽい味になるから大したものだ。見た目が写真と全然違うけどね(ソース混ぜ過ぎ&盛り付け下手のせい)
 スパゲティを茹でるのは短時間の一発勝負なので非常に緊張する。手際の良し悪しが味が直接結びつくから恐ろしい。でも茹で加減よりハーブのかけ過ぎで苦情が出る方がずっと多いな。ディルとチャービルでスパゲティを隠したりして。何故かインド風味になったのが不思議だった。

『人気の韓国&アジアごはん』世界文化社
 基本的な料理をマスターしたら、エスニック料理を作れるようになってやるー! と意気込んで、結婚前に買った本。初めはどの料理も難しく感じ、読み物として読むだけだったが、最近になってようやくレシピを活用出来るようになってきた。
 スパイスを何種類も用意したり、日本では手に入りにくい食材を使ったりするのがちょっと面倒なだけで、料理法は日本とそれほど違わないと気付いたのだ。
 まずはインドカレーとタイカレーを我が家の定番料理にしたい。いずれはタンドールでナンを焼く所まで……(やり過ぎ)

『人気のビストロフレンチ』世界文化社
 私の誕生日を祝う料理を作るために、ダーリンがさんざん悩んで選んだ本がこれ。普段着のフレンチ、なんて書いてあるけれど、レシピはずいぶん本格的なように見える。
 ダーリンが夜中までかかって作った「鶏肉の悪魔風」と「シュークルート」はたいそう美味しかった。愛を勘定に入れなくても、だ。
「ありがとう! 嬉しい! 美味しい! こんなの初めて!」
 大感激でバクバク食べたら、次の日、胃の調子がおかしくなってしまった。それ以来、この本の肉料理のレシピはほとんど見ていない。ダーリンの好きな料理も多いし、今後はもうちょっと活用したいものだ。

『奥薗式常識やぶり!おかず2品献立』芝パーク出版
 その日の忙しさに関係なく、やたらと料理に時間がかかってしまうので、
「日々を円滑に送るためには、手抜き料理も作れるようにならなければ!」
 と買ってみた本。おかず二品を同時に作って手間を省こう、というのが主旨。味付けが微妙(和風なのか洋風なのかはっきりしない)だったり、単調(作者のお気に入りの調味料が多用されている)だったりするのは、手抜き料理だから仕方ないのかもしれない。思いの外時間がかかるレシピがあったのにはちょっとまいった(単に私が不器用過ぎるだけかも)
 文句ばかり言ってしまったが、簡単で美味しく、我が家の定番になっているレシピもいくつかある(「中華丼」「きゅうりの即席漬け」など)
「忙しい時はこれを作れば良い!」
 と思えるものがあるのは安心だ。これで毎日の暮らしが少し楽になった気がする。

『決定版 毎日のおべんとう』主婦の友社
 ダーリンのお弁当を作るんだー! と意気込んで買ったものの、ごめんなさい。全っ然使ってません! 朝からこんな料理作ってられないよ〜 と尻込みしたまま、放置!
 この本のレシピにとらわれず、普段の料理を多めに作っておいてお弁当に回す、という考えでいかないと、一生お弁当なんて作れないんじゃないか、と最近は思っている。

『茂山千五郎家のおまわり』レギー
 おまわりとは、京都の言葉でおかずの事。私の大好きな狂言の茂山千五郎家で日々食されている「おまわり」が、季節感あふれる文章と綺麗な写真で紹介されている。読み物メインでレシピはおまけなので、説明は詳しくない。ど素人がこれだけ見て作るのは危険、と今までは眺めるだけだったけれど、もうそろそろ挑戦してみても良いかもしれない。
 まずは千之丞さん特製の豆腐ぎょうざあたりから。美味しいと良いなぁ。

『エッセンシャルクッキングハンドブック』デロンギ・ジャパン
 これは本とは言えないかもしれない。実家で買ったオーブンについて来た小冊子だ。置いておいても誰も使わなさそうなので、嫁入りの時に持って来てしまった(良いのか?)第三章でちょこっと書いた「イワシの香草焼き」はこれに載っている。タイムの香りがイワシの臭さを消してとても美味しいのだけど、あんまり良いイワシが売ってないんだよね。
「スーパーに行って品物を見てからメニューを決める」
 というのが出来るようになれば、良いのを見つけたその日に作れるのだが。まだ無理。

『食品成分表』一橋出版
 これは高校の家庭科で使った本。病気になった時の食品例が便利。結婚してすぐの頃、この本を参考にして便秘を治すための夕食を作った。

 麦飯
 サツマイモのグラッセ
 トウモロコシのバター炒め
 色々きのこのソテー
 ピクルス

 どれも美味しかったのに、全体のバランスが悪くて大不評。確かにモソモソ&油責めだ。タンパク質も足りない。便秘を治そうとするあまり、個々の食材にばかり気を取られちゃったんだよね。
 美味しく、体に良く、バランス良く。料理というのは全く奥深い。

・自分のファイル
 これには、自分で切り抜いた料理の記事や、ダーリンのお母さんに教わったレシピなどがまとめてある。ルーズリーフ一枚に料理一品、と決めて。自分で必要だと思った情報ばかりだから、『決定版 はじめての料理』の次くらいによく使っている。
「ダーリンの好きなもの」
「ダーリンの嫌いなもの」
 なんてページがあるあたりに、新婚の甘酸っぱさを感じるなぁ(勝手に感じてろ)



  あとがき

 ようやくここまで来た。
 文章を書く人間というのは不思議なもので、
「文章のネタになる!」
 と思えばどんなつらい事でも耐えられる。私は失恋の痛手も、失業の苦しみも、そうやって乗り切ってきた。
 結婚は幸せな出来事だけれど、慣れない環境にいきなりポンと入らなければいけない訳で、戸惑う事も沢山ある。不器用な上に家事の経験がほとんどない私は、数ヶ月間ひたすら目を回していた。
 本も読めない。ましてや文章なんて書ける訳がない。そんな精神状態の中で、
「これをネタにして本を作ってやる!」
 という思いだけは決して消えなかった。
 最近になって時間と精神に余裕が出来るようになり、どうにかこうにか書き上げたが、
「鶏ガラスープと和風だしと魚と本の話だけ? もっと書くべき事があったはずなんだが……」
 と少々不満だったりする。文章からこぼれてしまった小さな小さな経験全てが、もったいなくて仕方ない感じ。
 しかし、それら全てをここに注ぎ込む必要はないのかも、とも思う。
 短歌だのエッセイだのに手を出してはいるけれど、私の本業は小説書き。そちらの方でこの経験を生かさなければ。
「幸せ過ぎて小説書けな〜い」
 なんて逃げ口上は許されない。
 ……ほとんど口癖になってるけど(ダメじゃん)

 次は物語の中でお会い出来ますように。
posted by 柳屋文芸堂 at 10:39| 【エッセイ】ど素人料理談義 | 更新情報をチェックする