2019年12月21日

この万年筆でいったい何を書くつもりなんだ(その2)

二、紙の書き比べ



 ボールペンでは書きやすかった紙が、万年筆を使った途端に、にじんだり引っかかったりして「おや?」と思うことがある。万年筆のインクは水っぽく、ペン先の割れた部分が紙の繊維を削りやすいので、紙を選ぶのだ。

「結論:ボールペンすごい」

 それも一つの真理ではあるのだけれど、難しいからこそ凝りたくなる、というのがマニアの心理だろう。
 そんな訳でいくつか紙製品を用意し、万年筆で書き比べをしてみた。使用したのは、

【賀茂なす】
 セーラー万年筆 金ペン先 太字
 インク セーラー万年筆「賀茂なす」
【カヴァリエ(旧型)】
 パイロット 特殊合金ペン先 細字
 インク パイロット ブルー

 商品名に続くカッコ内は、紙の名前です。

☆MDノート(MD用紙)
 つるつるではなく少しだけざらっとした感触があり、それがちょうど良くペン先をつかまえてくれる。紙の裏にインクが抜けることもない。クリーム色なのも、目がチカチカしなくて良い。
 カヴァリエでも書きやすいが、さーっと素早く走り書きすると、引っかかりが大きい気がする。

☆ツバメノート(ツバメ中性紙フールス)
 さらさら書けて気持ち良い! MDノートとはちょっと違う気持ち良さ。こちらの方がつるつるしている。でもすべってはいかず、ちゃんとペン先をとらえてくれる。どちらが良いかは個人の好みだ。誤字をグシュグシュと塗りつぶす時の感触は、ツバメノートの方が引っかかりがなくて良い。薄い紙なのに、両面書いても裏の文字をあまり感じさせない。ツバメノート、初めて使ったけど地味ながら良い仕事してるな!
 カヴァリエで書くと、紙にペンを引っ張られる「重み」がある。賀茂なすではツバメノートの書き味の方が好みだが、カヴァリエはMDノートの方が書きやすい。面白いな。

☆LIFE バーミリオン 横罫(ライフLクリームライティングペーパー)
 MDノートに近いかな。つるつる過ぎない。クリーム色の紙面にピンクの罫線が可愛い。これも裏にインクがしみることはない。カヴァリエだとちょっとすべる。

☆ロルバーン(上質紙)
 化学薬品によって木材から不純物を取り除いた「化学パルプ」100%の紙を、上質紙というらしい。
「うちの社長が上質な紙だって言ってます。だから上質紙!」
 ではないんですね。きちんとした定義があるんだ。
 ロルバーンは表紙に付いているゴムバンドが便利で、日常の買い物メモに使っている。しっかり閉じられて、毎日繰り返しカバンから出し入れしても、紙がよれよれにならない。このゴムが邪魔だと言う人もいて、合う合わないは使ってみないと分からないものだ。
 紙は黄色。MDノートやツバメノートに比べると、ペン先の引っかかりは強い。困るほどではないが「気持ち良い!」とは言えない。
 不思議なことに、賀茂なすよりカヴァリエの方が書きやすい。紙とペンの相性は本当にそれぞれだ。

☆コクヨのキャンパスルーズリーフ(紙の名前は不明)
 十年以上前に買ったルーズリーフ。鉛筆向けに作られていて書きにくいだろう、と思ったら意外や意外、万年筆でも書きやすい。にじまないし裏抜けもない。つるつるし過ぎずさらさら書ける。他の会社のルーズリーフでひどくにじむものがあったので「コクヨ、やるな!」と思った。
 現在販売されているルーズリーフは、書き心地で選べるようになっている。「さらさら書ける」と「しっかり書ける」の二タイプ。いつか試してみたいですね。

☆エヌビー社 万年筆用A5便箋(バンクペーパー)
 バンクペーパーは銀行の帳簿用紙として開発された紙。インクが裏抜けしないので、便箋を束からはがさずに使えるのが便利。ちょっとすべりが悪く、ペンの動きが重く感じる。にじまないせいか、いつもより字が綺麗に見えた気がする。

 賀茂なすとカヴァリエの両方で書きやすいのはMDノートだった。ツバメノートはネットでも意見が割れていたので、少しペンを選ぶのかもしれない。紙の色と罫線の色が一番好みなのはLIFE バーミリオンだ。
 紙の感想は、ペンやインクとの相性、書き味や見た目の好みで変わる。ネットや雑誌で良いと言われているものが、自分にも必ず合うとは限らない。また同じ名前の製品でも、時々品質が変わったりするので油断ならない。

 用途に合った紙質を選ぶのも大事だ。走り書きするにはペンが引っかからずにするする動くもの。便箋は線の輪郭がカチッとした方が格好良い。
 大きさ、ページ数、罫線、綴じ方の好みもある。私は文庫サイズの薄い中綴じのノートが好きだ。旅行に持っていって小まめにメモを取り、これを元に旅行記を書いたりする。
 大きさや厚みが好みに合わないと使わない可能性が高いので、どんなに書きやすい紙であっても、買うのに躊躇する。

 何となくノートや便箋を買って、それからどう使うか考えるのも素敵ではある。しかし当然ながら、どんな使い方をするか決めてから選んだ方が、無駄がない。
 私が紙製品を買う時の判断基準は、
「立ったまま書けるか」
 落ち着いて、まずはそこに座れよと自分でも思う。