2019年12月21日

この万年筆でいったい何を書くつもりなんだ(その4)

四、文房具屋めぐり

 漫画を描いていた頃、文房具屋に行くたび、狂おしい気持ちで画材を眺めた。最も心惹かれたのは、パステル。子供にとっては高価なものだったので、バラで何色か買い求めた。カッターでカリカリ削って粉を散らし、綿棒で延ばして色を塗る。まさにパステルカラー。自分の拙い絵が、甘く淡い色彩にいろどられると、ただただ幸福だった。

 万年筆にハマったのは、この画材愛が「文章書きになった自分」に合わせた形で戻ってきたのかもしれない。そんな風に考えながら、東京都内の文房具関連のお店を巡り歩いてみた。

☆文房具カフェ(表参道)



 自由に使える筆記具と紙が置いてある。さまざまな種類のクレヨンがあり、私は透明クレヨンとミツロウクレヨンでお絵描きした。





 コピックもかなりの色数がそろっている。
 絵を描く友達と来たら盛り上がりそうだ。数名(二人〜六人ほど)でわいわい絵を描いている人が多かった。一人の人もいた(私も)
 描いた分の紙は、切り取って持ち帰ることが出来る。
 カレーやスパゲティーなど、しっかりした料理が出るのも嬉しい。野菜も豊富でした。

☆ブングボックス(表参道)
 オリジナルインクが全種類万年筆に入った状態で置いてあり、自由に試し書き出来る。ここのオリジナルインクは素敵なのだけど、値段が高くて、うーむうーむとうなりつつ「ノルウェーの森」を買ってしまった。村上春樹ファンがこの名前の前を素通り出来るはずがない。
 お菓子屋さんのような小さなお店で、店員さんとの距離も近い。何も買わずに出てくるのは至難の業だ。覚悟して行け!

☆ラミー(表参道)
 おしゃれな場所にクールな雰囲気で出店しているから、店員のお姉さんも取り澄ましているのかと思いきや、そんなことはなく、質問すると親切かつフレンドリーに答えてくれた。
 ラミーは人気のある「サファリ」のデザインが好みではなくて(使っている人多いでしょうね。ごめんなさい)自分では買わないだろう、と思いきや! 試し書きしてみたら、軸の人差し指と親指の当たるところが平らになっていて、正しい持ち方を維持しやすい! 書きやすい! バウハウス的な機能美を感じる。欲しくなってしまった。写真で見るより実物を触る方が、物欲を刺激されるねぇ……
 字幅が日本のメーカーより太くて驚いた。細字がもう太い。ドイツ人は漢字を書く必要がないからだ。
 何も買わずに出てきても、店員さんは気持ち良く送り出してくれた(※表参道のラミーのお店は2019年4月に閉店してしまいました)

☆THINK OF THINGS(原宿)



 コクヨが経営しているカフェ。腹ペコで入ったら、揚げたてのコロッケパンを食べられて、めちゃうまだった。



 キャベツぽろぽろ、コロッケ落ちないかヒヤヒヤで食べにくかったけれど、空腹+揚げたてコロッケに勝る食いもんなし。
 食事が出来るだけでなく、ノートや便箋など、コクヨ製品も販売している。
 ゆったりしたBGMが流れ、混んでもいない。のんびりおしゃべりするのに良さそうだ。一人で来て小説を書くのも良いかもしれない。

☆西武池袋本店
 紳士服の階に高級筆記具のコーナーがある。万年筆入門書を読む前、Dちゃんの買い物を待つ間によく冷やかしで眺めていた。
「万年筆って高いんだなぁ」
 しかしよく見ると、ボールペンの値段も高い。高価な筆記具ばかり集めているのだと気付いた。
 万年筆にハマった後に再び訪問。全てのメーカー名が分かるようになっている自分にウケた。イタリアの万年筆、ヴィスコンティの実物は本当に綺麗だった。ゴッホの絵をイメージした万年筆と、インクのセット。うっとりするような色だった。

☆銀座伊東屋本店
 本館(G.Itoya)は縦にデカい! 十二階まである。くまなく回る時間はなかったので、七階の「竹尾見本帖」を中心に。
 竹尾は紙の専門商社だ。千種類以上の紙を、見て、触って選ぶことが出来る。プリンタのメーカーごとに写真の出力見本があったり、「しっとり」「ツルツル」など質感別のファイルがあったり、どんな紙があるかを知るには最高の場所だ。しかし特殊な大きさで売っているため、A4やB5など、よくあるサイズで欲しい場合は、断裁料がかかる。一枚あたりの単価も高い。
 同人誌を作っている人たちと一緒に行って、紙の名前を叫びながら、きゃあきゃあしたら楽しそうだ(同人誌を作る人たちは、本文や表紙の紙を選ぶ必要があるので、自然と紙に詳しくなる)
 二階のレターフロアにも行った。品揃えが豊富で、万年筆向きのレターセットも多くある。他の店より価格が高いということもない。あれこれ見て悩んだ末に、バンクペーパーの便箋を購入した。

 日本橋高島屋にntさんという有名な販売員の方がいる。万年筆を売るのがものすごく上手くて、
「インクを見ようと思って行ったら、インクと万年筆を買っていた」
「支払い後の貧しい生活に備えてモヤシ料理のレシピを教えてくれる」
 など様々な伝説がある。ぜひお会いしてみたいが、予想外の出費をしてしまいそうで怖くて行けない。

 文房具屋めぐりは危険な遊びです。自制心を持っていくのを忘れずに。