2014年10月11日

邯鄲(その26)

「お客さん!」
 駅員に起こされ慌てて電車から降りる。いつの間にか僕も寝ていた。
「乗り過ごした?」
「いや、終点が最寄りで助かったね」
 ちょうど良いバスが無かったので、タクシーで実家に向かう。
「おっかえり〜 おっ! メグちゃん久しぶり〜!」
 メグと咲はきゃあきゃあと再会を喜び合っている。
「台所綺麗にしておいたよ」
「ありがとう」
 咲は口は悪いが、頼まれた仕事は絶対にきちんとやる。そこは昔から変わらない。
 メグは持ってきた荷物を解き始める。僕は居間で横になった。
「お兄ちゃん、出来たよ!」
 咲に蹴飛ばされて起きる。布団がかけられていたので、別に痛くはなかった。
「メグちゃんが立ち働いているのに寝ちゃうなんてひどい夫!」
「うっ」
「しかし実を言うと私も寝てたんだ」
「疲れてるんだね」
 二人で白髪だらけなのに染めてない髪をかき上げる。
posted by 柳屋文芸堂 at 23:26| 【中編小説】邯鄲 | 更新情報をチェックする