2014年04月06日

あとがきエッセイ

 柳屋文芸堂初のお洋服小説「薄紅の家、素晴らしき世界」いかがでしたでしょうか。自傷行為にフリフリ服と、私の好きなものばかり(語弊あり?)出したので、書いている間、とても幸せでした。ちょっとおかしくなった女の子を、まともな男の子の視点で書く、というのが私にとって一番楽な方法のようです(覚えているだけで「火の川」「夕闇にのぞむ窓辺」に続き三回目。他にもあったかな……?)

 現実でも、一人寂しく狂うのではなく、誰か信頼している人に見守られながら、安心して発狂したいものだなぁと、つくづく思います。
「それは困る。元気でいてくれ」
 とDちゃん(旦那のハンドルネーム。ダンナ・ダーリンの頭文字ではない)は青ざめていますが。まあ、実際の人生の方はきっと大丈夫でしょう。狂気はあるだけ全部、小説につぎ込んでいるので。厄払い済みの精神はあっけらかんとして元気です。狂人小説健康法。流行らないかな〜?

 本当は小説から独立させてひらひら服との出会いについてのエッセイを書こうと思っていたのですが、物語と重なる部分が多いので、もうちょっとささやかなあれこれを「あとがきエッセイ」としてぽつぽつ綴(つづ)っていこうと思います。

 この小説に出て来るお店は、一応、実家の近所にあるピンクハウスがモデルです。でも「十年一日のごとく」重ね着ドレスが飾ってあるなんて、ウソですね。最近は短いスカートやズボンなども扱っていて、ショーウィンドウもこざっぱりしています。普段着にしやすくてありがたいと思う反面、かつてのようなもわもわの幸福感をもっと出してくれ! と物足りなさも感じます。景気も流行も関係なくひらひら服を商い続ける夢のお店、と考えてもらえれば良いかな、と。

 二人が聴く曲はルイ・アームストロング(愛称「サッチモ」)の「What a wonderful world(この素晴らしき世界)」です。ザラザラした歌声は本当にあたたかくて、奇跡みたいに感じます。その音を傷口に当てれば治ってしまうんじゃないか? と思うほど。

 ピンクハウス創設者である金子功のブランド「ワンダフルワールド」はこの曲名にちなんで付けられたようです。私は服と曲を別々に好きになって、のちに関係があると知り、感激しました。どちらも人を包み込んで幸せにする。私の文章にもそういう力が宿ればいいのになぁ…… 精進します。

 このあとがきの書き方は、桜庭一樹「GOSICK」を参考にしました。面白いんですよね〜 小説の内容と全然関係ない、狛犬泥棒の友人の話とかが入ってて。やたら長いし(十数ページ!) もうこれはあとがきというより、エッセイなのでは? ファンとしては嬉しいけど、書く方は大変なんじゃなかろうか。

 本編の小説ももちろん大好きです。子供向けに分かりやすく書かれたミステリーで、推理小説が苦手な私でもワクワクしながら謎解きに参加出来ます。そして何よりラブコメ部分が楽しい! 意地っ張りヴィクトリカと頑固な一弥の痴話ゲンカ(?)に胸きゅん!

 このヴィクトリカが、ひらっひらのふわっふわの可愛い服を着ているんですよ〜 本の最初に入っているカラーのイラストページをうっとり眺めるのが楽しみで。ライトノベルって今まであまり読んだ事がなかったのですが、こういう喜びがあるんですね。文章の中にも服装の描写が多く、大量のフリルをめくってようやく大切なペンダントが出て来る場面が、私は好きです。ヴィクトリカは陶人形のように美しいという設定だから許されるけど、私がもし着たら、
「緩衝材……?」
 とかイヤミを言われてしまうんだろうなぁ。でも着てみたい……

 同じ作者の「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」も面白いです。ひらひら服と全然関係ないけど(単純に、今現在すっごくハマってるだけです。すみません)服装の描き方はけっこう丁寧で、印象に残ります。

 数年前の文学フリマで、同じ会場にいたんだよなぁ、桜庭一樹。その頃は全く名前も作品も知らず、
「有名な人が来てるんだ。へ〜」
 と思っただけでした。野次馬根性出して、顔だけでも拝んでおけば良かった…… 後悔先に立たず。

 ヴィクトリカみたいに全身フリルのフル装備をしてみたい! と願いつつ、経済的にも顔的にも問題があるため(無職・色黒・ゲジゲジ眉毛)ひらひら服はシンプルな着方をする事が多いです。ピンクハウス・ワンダフルワールドというと、ゴテゴテと重ね着するものだと思われがちですね。街でもそういう人の方が目立つし。でも私は、ワンピース一枚、もしくはスカートとブラウスだけを普通に着ても十分可愛いと思っています。その方がデザイナーの意図に近い気もするし。スカートの下にペチコートをはけば、もう私にとってのフル装備。少々情けない……けれど、身の丈に合ったやり方が一番だと思うので。

 長そでTシャツにジーンズ生地のジャンパースカートを組み合わせるのも大好きです。それぞれ色違い・柄違いで数種類ずつ持っています。素朴な見た目ながら形はひらひら服と同じなので、ピンクハウスに興味を持ちつつ着る勇気のなかなか出ない小心者&初心者におすすめ。お腹周りがゆったりしているから、マタニティドレスとしても使用出来ます。こんなのばっかり着ていたから、周囲に先駆けて中年太りしちゃったよ。副作用。

 ひらひら服を着る時、悩む事が色々あります。
「似合っているのか」
「似合わない服を着て街を歩くのは、迷惑行為ではないのか」
 等々の本質的な問いは、とりあえず脇に置いておいて(良いのか?)

 まず、眼鏡をどうするか。ど近眼の私には大きな問題です。最初のうちは、
「可愛い服を着たら、やっぱり眼鏡は外さないと!」
 と考え、コンタクトをしていました。しかし眼鏡っ娘を愛する同人作家さんのファンになり、どうにか眼鏡をしたままひらひら服を着られないものかと思案し、試し、発見しました。
 ひらひら服+眼鏡+三角巾風に巻いたバンダナ
 は相性が良い! きっと、たぶん、おそらく、もしかしたら…… 私の勝手な解釈なので、全然似合ってなかったらごめんなさい。

 眼鏡には「知性」と「ひょうきんさ」という二つの相反する性質が含まれています。どちらもひらひら服にはなじみにくく、困ってしまうのですが、バンダナをする事によってそれが解決。二つの性質が、「愛嬌」という、女の子に必要不可欠な要素に統合されるのです! きっと、たぶん……

 今回の私の小説みたいですが、ワンピース、もしくはツーピースで全身を真っ赤にして、その上にさらに真っ赤なバンダナをすると、可愛いし、元気になります。赤バンダナはジーンズ生地の服にも合うので便利です。
「雅なバンダナ」
 なんてダジャレを言う人が近くにいるけど無視しよう……(映画「もののけ姫」の中のジコ坊のセリフ「雅な椀(わん)だな」のもじり。分かりにくい〜)

 次に悩むのが、靴。
 地味なローファーは不思議になるくらい合いません。普通の運動靴も全然ダメ。その二種類しか持っていなかった私は呆然としました。ピンクハウスで黒い厚底サンダルを買い、黒タイツと一緒に履いてごまかしていたものの、暖かくなって来たらどうしたら良いか分からない。白い靴下の上に黒サンダル。か、格好悪ぅ〜!

 そんな時、「ワンダフルワールド」よりちょっと大人向けのブランド「カネコイサオ」で、バレエシューズのような華奢な靴を見かけました(小説とかぶりますね)おお、私の探し求めていたものが……! とけっこうな値段だったのに黒と茶を一足ずつ購入。ウキウキして履いて出かけたら、
「い、痛ーい!」

 何故か足の筋がつりまくって動けなくなってしまった。一応試しに履いてから買ったので、サイズは問題ないのです。きっと足の形が合わなかったんですね。細くなくて平べったいもん、私の足。それにしても、デザインが可愛い靴って、細い形のが多いよね〜 可愛い足を持たぬ者は、履くなという事か? ひどいよう。

 仕方がないので、この靴はかかとをつぶし、ゴミ捨てに行く時の「つっかけ」として転用しました。今では玄関からも引退し、ベランダで干し物をする時専用になっています。日に焼かれ、色もあせて無惨な姿に。許せ……

 その後Dちゃんが丸っこいデザインの運動靴を見つけてくれて、カジュアルなひらひら服はそれでどうにか間に合うようになりました。紺色なので明るい色の服ともケンカしません。そう、個性の強い服飾品はそれぞれを仲良くさせるのが大変なんですよね〜

 フォーマルな服にはハッシュパピーで買った黒い靴と茶色い靴を。(たいてい何でもこの二色をセットでそろえる。無難なやり方)ここのメーカーはカジュアルとフォーマルの間くらいの、可愛らしいデザインが多くて重宝します。

 しかし何といっても一番しっくり来るのは、ピンクハウスのサンダルですね。夏だけしか使えないのが難点だけど。初代のサンダルは履きに履き倒して、底がすっかり削れてしまいました。
「ゴムが無くなって、ねじ回しが見えるようになっちゃってさ」
 とDちゃんに言うと、 
「そんなものサンダルに入ってないでしょ?」
 はい。ねじ回しではなくねじの間違えでした。工具箱じゃないんだから。まあ、どっちにしろ履き過ぎ。

 現在は四代目で、ピンクハウスではなく同じ会社の大人ブランド「インゲボルグ」のものです。ラメ入りの真っ赤な(こればっかりだな〜)ペディキュアをしてこれを履くと、恐ろしいほどのマダムっぷり。黒地に大きなスズランの絵がいくつも散っているサンドレスに合わせれば無敵です。いや、誰と戦うんだろう。近所のおばさん……?

 秋の風が吹き始めた頃、私は考えました。
「寒くなったらブーツにしよう。ひらひら服に合うし、靴選びに悩まされずに済む!」
 それまでブーツ未経験だった私は、母に相談してみる事に。
「何十年も前に履いていたのが下駄箱に入ってるわよ。カビてるけど。いる?」

 そんな長期熟成したブーツ、イヤ! 母は物を大切にする(というか捨てられない)タチなので、たまにこういう訳の分からない物が発見されます。他の靴もカビちゃうから早く捨てて欲しい……
「ブーツはあったかくて良いわよ〜! ぜひ買いなさい!」
 というアドバイスに押されて、デパートへ。

 まずはピンクハウス。店員さんに出してもらうと、素直な形の編み上げブーツで見た目は良いが、ファスナーが付いていない。毎回ひもを通して編み上げろと……? ムリムリ。不器用な私に出来るはずない。却下。

 次は靴売り場へ。ちょうどブーツシーズン到来直前だったため、いたる所ブーツだらけ。選びがいがある。
「つるんとしてるのはウルトラマンみたいだから、ひもを結ぶタイプが良いんだ。ブカブカして長靴みたいなのもダメ!」
「ふうん」
 ちょうど一緒にいたDちゃんとキョロキョロ。

「のりが欲しがっているひものやつってさ……」
「うん?」
「ボクサーみたいだね」

 つるん→ウルトラマン→×
 ブカブカ→長靴→×
 編み上げ→ボクサー→×

「全部ダメになっちゃったじゃん!」
「ごめんごめん」
 どうすれば良いんだ〜 もうこれはブーツを買うなという事か? 

 さんざん悩んだ末、裏革っぽく仕上げた人工皮革の長靴ブーツを購入。ブカブカ度が低く、ひらひら服に合いそうなデザインだった。
 それなりに気に入って冬の間毎日履いていたのだが、二年目の冬にファスナーが壊れて上がらなくなってしまった。直そうともあまり思えず、すぐに捨てて、その後はブーツなしで冬を越している。ブーツとはあんまり縁がなかったのかもしれない。人でも物でも、そういうのって、あるよね。

 何だか服談義ではなく靴談義になって来たので、この辺で話題を戻しましょう。
 私は服にしろ靴にしろ、自分の着こなしに全く自信がありません。ここまでの文章を読んでもらえば分かりますよね。いつも迷って悩んでばかりいる。どんなに頑張って可愛い服を着ても、野暮ったく見えるんだろうなぁ、という寂しい諦観が消える事はない。

 それでも私は、他人がどう見るかではなく、鏡の中の私が満足そうな顔をしているかどうかを重視して、服を選びます。それが何より大切だと思うから。野暮な心は、野暮なファッションに包み込まれて初めて、居心地良く暮らせるのです。

 自己満足百パーセントの格好だというのに、たまに褒めてくれる人がいて、びっくりします。みんな体の奥の方に「野暮な心」をしまいこんでいて、それに共鳴するのかな? 金子功が生み出したひらひら服の力と言えばそれまでだけど。野暮とは言い換えれば、あか抜ける事を生涯拒否する、うぶな乙女心のようなもの。ピンクハウスやワンダフルワールドの基本理念と、そう違わない……よね。うん。

 他人に見せるための服装でない証拠に、外に出かけない日でも私はひらひら服を着ます。
「大切な服こそ日常でバンバン着る」
 が信条です。会社に勤めていた頃は、そのままトイレ掃除もしました。シンデレラ気分で幸せだった……

 ふんわりふくらんだロングスカートで日々を過ごしていると、世界名作劇場に出て来る登場人物になったような、不思議な気持ちになります。西洋の古い服に似ているせいですね。物語性の強さは洋服に不可欠だと思うのですが、どうでしょう?
posted by 柳屋文芸堂 at 22:11| 【短編小説】薄紅の家、素晴らしき世界 | 更新情報をチェックする