2013年03月23日

オカマ板前と春樹カフェ(3/49)

 あたしは毎日生ぬるく笑われながら、お寿司屋さんで下働きを続けた。ヤンキー上がりの男の子が先に包丁の使い方を教わったって気にしない。あたしがいつも考えていたのは、口先ばかりで手が動かない先輩のことでも、不公平な板長のことでもなく、お腹を空かせて待っているお客さん、ただそれだけだった。
 注文が入ると、厨房でこれから誰が何をするか、全て予測する(予知能力がなくたって、調理の段取りを理解していれば出来ることだ)そして道具や食材を最も的確な場所に配置してゆく。先輩たちがあれが無い、これが無いと怒鳴り始める前に。一分一秒でも早く、少しも味の落ちていない最善の料理を、お客さんに食べてもらいたかった。
 まかない以外の料理を作らせてもらえないまま三年が経ったある日、父親から電話が来た。
posted by 柳屋文芸堂 at 01:00| 【中編小説】オカマ板前と春樹カフェ | 更新情報をチェックする
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