2013年03月23日

オカマ板前と春樹カフェ(14/49)

「この子、こう見えても板前だったの! 最初ここに来た時は角刈り」
「えーっ」
 いつもあたしをからかうのはナナさんだ。
「中卒のヤンキー上がりの男の子と一緒に入ったんだって。昇り龍の刺繍が入ったジャンパー着てるタイプ。黒地に金色の糸でばーんと」
「今時、龍!」
 龍の話なんてしたっけ、とぼんやり考える。お客さんは酔っ払っているし、ゲラゲラ笑う。
「この子はおとなしく見えるけど、スカートの中に素晴らしい伝家の包丁を隠し持ってるからさ、そのヤンキーも美味しく頂いちゃったのよ。板前だけに!」
「た、食べてません」
 寿司屋の厨房は男だらけの秘密の花園、あたしはそこをハーレムにして食べ放題、というストーリーをナナさんは勝手に作ってしゃべりまくった。お寿司屋さんには嫌な思い出しかなかったから、空想の中で仕返ししてもらっている気がした。せいせいした。
posted by 柳屋文芸堂 at 00:52| 【中編小説】オカマ板前と春樹カフェ | 更新情報をチェックする
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