2013年03月23日

オカマ板前と春樹カフェ(15/49)

 団体客が来ると必ずその中で一番格好悪い男に好かれてしまって「雑魚殺し」という二つ名がついたり、泥酔した雑魚におっぱいを揉まれてシリコン製の詰め物がずれたり、わあわあ働いているうちに夏が終わって秋が来た。女の子みたいな可愛いコートを買っちゃおうかなー なんて乙女な悩みでぼんやりしていた時に、ナナさんにぽんと肩をたたかれた。
「角のヴェローチェに行ってくれる? 小太りおじさんが待ってるから」
 二秒ばかり考え込んでしまった。
「こぶ取り……じいさんではなく?」
「あんた、老け専だっけ」
「違います! 待ってるって、お客さんですか」
「ううん、個人的な知り合い。デブ専にモテるには痩せてるし、老け専に愛されるには若過ぎる、中途半端な感じの男よ。行けば向こうから声をかけてくるはず」
 それだけ言うとナナさんはフロアの方に出ていってしまったので、あたしは訳も分からずヴェローチェへ向かった。伸ばしかけの髪型が恥ずかしく、毛糸の帽子を深くかぶったまま、店内に入っていった。


posted by 柳屋文芸堂 at 00:52| 【中編小説】オカマ板前と春樹カフェ | 更新情報をチェックする
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