2013年03月23日

オカマ板前と春樹カフェ(24/49)

 小さなちゃぶ台の前に座ってもらい、あたしは台所に戻る。パスタは時間が勝負だ。時計をにらみながらスパゲティを茹でる。ソースをからめる。とにかく手際良く。
 ことりとお皿を置く音を聞き、周平さんは読んでいた文庫本から顔を上げた。
「説明は後でします。伸びたら台無しなんでどんどん食べてください」
「はいはい」
 基本はトマト味だ。枝豆とソーセージを載せ、バジルと松の実のペーストをかけてある。一口目。反応は悪くない。二口目、三口目と速度が上がっていく。
「枝豆とバジルって合うんだ。意外だなぁ」
「いつもの枝豆じゃないみたいですよね」
 ソーセージをかじった瞬間、微笑んでいた顔が急に真剣になった。
「これ、どこで買ったの? こんな美味しいソーセージ初めてなんだけど!」
「自分で作りました」
 周平さんの目がまん丸になる。
「何それ、新手の性欲解消法?」
「ち、違います! 肉の加工品って市販のものは美味しくないから、全部手作りしてるんです。ソーセージも、ハムも、ベーコンも」
 周平さんは信じられないものを見るようにあたしの顔をながめ、五秒ほど固まっていた。
「ほら、伸びちゃう」
「んん」
 かっ込むように残りを食べて、ようやく二人とも落ち着いた 。あたしは送ってもらった小説のコピーを出す。
posted by 柳屋文芸堂 at 00:39| 【中編小説】オカマ板前と春樹カフェ | 更新情報をチェックする
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