2013年03月23日

オカマ板前と春樹カフェ(29/49)

 周平さんは喫茶店で二冊の通帳を見せてくれた。それぞれにきっちり一千万円ずつ入っている。
「今までいかに会社の名前で仕事をしていたか思い知るよ。君に信用してもらうために、これくらいしか証明になるものがないんだ」
「別に、会った時から信用してますよ?」
「あんな自宅のプリンターで印刷したぺらぺらの名刺を渡す奴を信じちゃいけない」
 あたしは首を傾げる。周平さんは大人っぽい歪んだ微笑みを見せる。
「そんなに貯めるなんてすごいですね」
「真面目に働いてケチケチ暮らせばそう難しくない。僕には何の才能もないし、せめて手堅い生き方くらい守らないと」
 あたしに払うつもりのお給料がいくらなのかも教えてくれた。あたしは無給でもやる気でいて、生活より料理優先の自分が可笑しかった。


posted by 柳屋文芸堂 at 00:35| 【中編小説】オカマ板前と春樹カフェ | 更新情報をチェックする
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