2013年03月23日

オカマ板前と春樹カフェ(38/49)

「僕はね、生きている作家の本は、古本じゃなく、新しいのを買うようにしているんだ」
 外国文学の棚の前に立ち、周平さんはゆっくりした口調で言った。
「節約してる身には出費がこたえるけど、少しでも応援したいからね」
 本から目を離しこちらを向く。今日初めて視線が合った。
「お金の話ばかりする僕を軽蔑してる?」
「そんなことないです! あたしのうちも料理屋だったから、売上げや経費が大事なのは知ってます。味のことだけ考えていたんじゃ店が回らないって。でも」
 でも、何だろう。周平さんは、後を続けられないあたしの方を向くのをやめた。棚から白い表紙の薄い本を出し、裏の値段を見て、棚に戻す。


posted by 柳屋文芸堂 at 00:28| 【中編小説】オカマ板前と春樹カフェ | 更新情報をチェックする
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