2013年03月23日

オカマ板前と春樹カフェ(40/49)

「……ナナさんは、憧れてるし尊敬もしてるけど、恋愛の『好き』ではないです」
「そうだね。僕も七瀬を尊敬してる。頭が良い上に努力家だ。あのオカマバーで働きながら、大学院に通って博士号を取ったんだよ」
 あたしは口をあんぐり開けてしまう。
「そんな話、誰もしてません!」
「内緒にしてるはずだ。『オカマ博士』なんてネタにされたらたまらないじゃないか」
「あたしのことは『オカマ板前』ってさんざんいじり倒したのに」
 周りのお客さんの迷惑にならないよう、二人で声を殺して笑った。
「二丁目で働けそうな女顔、とからかったら実行しちゃって驚いたよ。あいつの専門は歌舞伎でね、実際に女形になって研究に生かしたかったのかもしれない」
 ナナさんの完璧な美しさを思い出す。虚構の美。お客さんを必ず笑わせる荒唐無稽な作り話。
 すっかりリラックスして、その後はいつも通りおしゃべり出来た。周平さんは文庫本、あたしは料理の本を買い、店を出た。
posted by 柳屋文芸堂 at 00:26| 【中編小説】オカマ板前と春樹カフェ | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。