2013年03月05日

愛(4/4)

   現実

 二人の愛人の間で揺れる
 恋多き人のように
 今夜もくちづけに集中できない

 浮気の相手は三人のおばあさん
 戦争と生活に追われて
 行き場を失った荒々しい愛情を
 全力で私に注ぎ込んだ

 愛され過ぎても人はゆがむ
 あなたはそのズレを目ざとく見つけ
 ゆがんでいるのは世界の方だと
 確信して

 そんな人の優しいくちづけだというのに
 私はどうしても集中できない
 生まれてこのかた浴び続けた
 愛情が強過ぎたのだ

 どうして逃れられると思ったのだろう?
 軽やかな足取りで
 すんなりと腕の中にすべりこんだ
 つもりだったのに

 戻れない、もう
 夢見心地にも
 あの場所にも 

 どこにも
posted by 柳屋文芸堂 at 02:22| 【詩】愛 | 更新情報をチェックする