2009年09月27日

ぬか漬け日記(その24)

   五月二十七日
 心配しながら何度もぬか床を確認。唐辛子と塩が良かったのか、ふくらんでいない。臭いをかぐと、ぬからしい香りがほのかにする程度。菌の活動が抑えられているのだろう。昼間のうちに水取り器にたまった水を捨てた。

 夜(漬けてから約二十四時間後)山芋を出した。辛くもならず、しょっぱくなり過ぎもせず、良い味に漬かった。酸味が出て、前回作ったものよりも、珍味屋で買ったものに近くなった気がする。

 粕漬けのようにはならなかったので、Dちゃんが気に入ってくれるか不安だったが、美味しいと言ってくれた。フルーティーで、シャキシャキしていて、まるで梨のようだ、と。梨がこんなにヌルヌルしてしたら、イヤだと思うけど。今回は山芋の食感がほとんどそのまま残っているのだ。菌がそんなにヌルヌルを食べなかったのだろう。それでもうまみはしっかり出ている。

 山芋がフルーティーになるというのは、なかなか面白い。手間をかけて作った日本酒には、果物のような甘い香りがあると、「もやしもん」に書いてあった。山芋に起こったのも、同じ作用だろうか。

 突き詰めて考えると、フルーツをフルーティーにしているのも、菌なのかもしれない。その証拠に、熟れてないフルーツは全くフルーティーではないし、腐る寸前のフルーツは最もフルーティーで、美味しい。これは人間に悪さをしないギリギリまで菌が増えたためだろう。

 つまり、フルーツはフルーツだからフルーティーなのではなく、菌に愛されたものがフルーティーになり、たまたま自然な状態で菌に愛されやすいのがフルーツだった、というだけなのではないだろうか。

 いやまてよ。ものをフルーティーにする作用は発酵だけでなく、「酸化」もある。高級な紅茶や烏龍茶に果物の香りを生じさせるのは、菌の働きではなく、酸化だ。フルーツが熟れる、というのはこちらの方が近いのだろうか。それとも発酵と酸化がともに起こるのだろうか。

 知識の少なさにイラ立つ。農学部に入り直そうかしら。

 ぬか床に付いてきた説明書だけでは、物足りなくなってきた。ぬか漬けの結果がまばらになるのにも、不満を感じる。ギャンブルのようで楽しい部分でもあるのだけれど。農学部は無理としても、本でちゃんと勉強したいな。

 ぬか床はかき混ぜ、冷蔵庫にしまった。
posted by 柳屋文芸堂 at 12:35| 【エッセイ】ぬか漬け日記 | 更新情報をチェックする