2008年10月21日

その音の響く夜に(その8)

 銀が包丁を手に取ると、一太は白い植木鉢のようなものの上に黒い重たそうなナベを載せた。一体何をしているのだろうと不思議に思って見ていると、ナベの中のお湯がだんだんと煮立ってゆき、小さな泡が生まれたり消えたりするようになった。どうやら白い植木鉢は、色々な物を熱するための道具のようだ。
 これの他にまきも燃えており、その近くからご飯の炊ける良い香りがほのかにただよっている。おそらく一太となっちが寝ている間に、銀が準備してくれたのだろう。
 二人が朝食を作っている、という事はすぐ分かったが、台所の様子がなっちの家とあまりにも違うので、手伝いようがない。まあたとえマンションと同じ調理器具がそろっていたとしても、なっちが役に立てたかどうか怪しい所だ。自分のうちで料理を手伝った事など一度もないのだから。
 なっちの家ではいつでも、母親がご飯の用意をしてくれた。
posted by 柳屋文芸堂 at 22:44| 【中編小説】その音の響く夜に | 更新情報をチェックする